なぜ人は砂漠で溺死するのか?


どうも!

法医学者の方の本で、こういうのがあるのですが、不思議なタイトルですよね。砂漠と溺死。

普通だったら考えられないですし、想像できないですよね。

今日はそんな、思い込みのお話です。

溺死とはおぼれて死ぬことです。えっ、砂漠で!?

皆さんの疑問はもっともです。

しかし、2009年11月25日、サウジアラビアで事件は起こりました。

この地域は年間雨量30~40mm程度。年間降雨日数が何と7日。
その町で6時間で72mmも降りました。そりゃ~パニックですよね。

そんな雨の降らない町なので、当然排水システムが備わっていません。
そんな町に短時間でいっぱい雨が降ったら・・・。

道路は冠水、人も車も流される。水深は2mにも達したらしいです。
そして泳ぎに習熟した人も少なかった。

結果的に洪水に飲み込まれて、命を落とす結果になりました。

思い込みって怖いですよね。

皆さんが、普段痛い症状もこれと同じようなことがたくさんあります。

最後の引き金を引いた動作が原因だと患者さんや医療者も考えがちです。

さてここで皆さんに問題です!!

それぞれの死因を推理して、死亡の直接原因と引き金になった原因を究明して下さい。

問1、~裕作編~

大下裕作37歳、妻と2人暮らし。8年前から高血圧の持病があり、血圧の薬は常に服用している。
2年前には脳梗塞もしている。そのために、今でも左半身に軽い麻痺が残っている。
ある夜、大下裕作はバンド仲間と忘年会。午後9時ごろに上機嫌で帰宅。久しぶりに酒を飲み、テンションMAXで午後10時ごろから気分よく歌を歌いながら1人で入浴を始めた。

ところが、午後11時を過ぎても風呂から上がってこない。心配になった妻は『裕作さんっ!』と声をかけたが、反応がない。歌声も聞こえない。胸騒ぎがして浴室のドアをあけると、裕作が浴槽に沈んでいた。
なんとか浴槽から出し、119番通報をする。

病院に搬送も残念ながら午後11時50分に死亡が確認された。病院では死因は特定できず、行政解剖を行ったところ、左大脳に新鮮な出血がみられた。
また、大脳の右側には脳梗塞の古い病巣も見つかった。
更には、気道と肺には、白く泡立った水が充満していた。
監察医は裕作のその夜の行動を遺族から確認したうえで、死因が特定できた。

問2、~裕樹編~

『自宅で息子が首つり自殺を図った』と父親から119番通報。
電話口で救急隊員は父親にすぐに心臓マッサージを指示し、救急隊員を家に向かわせた。
8分後に救急隊員が駆け付けると、父親は西村裕樹39歳の上にまたがって必死の形相で息子の胸を押していた。
すぐに救急隊員が蘇生を試みるが、すでに心肺停止状態。

その後、救急搬送されたが、病院到着後に医師により死亡が確認された。
西村裕樹の死は、異常死として直ちに監察医が検案に訪れた。
検案してみると顔面はうっ血し、両眼の結膜には血が滲んだような、いっ血点がみられた。また、舌は飛び出しており、失禁していた。
首には紐を巻いたような索状痕が水平に走っている。左の手首には、ためらい傷のような切り傷が2つあり、流動血が見られた。

監察医は検案を終えると、警視庁の検視官を呼び寄せ、何事か耳打ちをしているようである。

どうでしょうか? わかりましたか?

では解答と解説です。なんか受験勉強みたいですね(笑)

あっ、皆さん分かっていると思いますが、この問題フィクションですから(笑)
大下、西村ともに健康で毎日、がんばっております(笑)

問1の正解です。

直接死因・・・溺死による窒息

その引き金・・・脳内出血

では解説です。

大下裕作の直接死因は風呂で溺れたことによる窒息死です。
気道と肺が白く泡立った水で充満してたことから明らかで、死後に肺に水が入れば気泡は見られない。
気泡は呼吸しながら水を吸い込んだという事です。
だとすると、なぜに裕作は風呂で溺れたのでしょうか?
その原因が脳内出血です。
それが起きたのが8年前からの高血圧症、忘年会での飲酒、そして入浴。
忘年会なので季節は12月。寒い中で高血圧の人が飲酒でいきなり入浴というのは典型的なパターンです。

問2の正解です。

直接死因・・・絞死

その引き金・・・他殺

では解説です。

これは自殺ではなく、他殺と見破れるかがポイントです。
裕樹の首の索状痕が水平だった点に注目しましょう。首つりであれば、索状痕は首から耳の後ろにかけて斜めに走るはずです。なので、裕樹はひも状のもので絞殺されたことが強く疑われるのです。
また、生前につけた傷は軟凝血になるはずで、流動血にはなりません。
よってリストカットを死後に偽装した可能性が高いのです。
以上のことから、直接死因は絞殺で、引き金は他殺という事になります。
ちなみに父親が犯人かどうかは警察の仕事で、監察医の判断することではありません。

みなさん、どうでした?

私は推理マニアなのでちゃんと分かっちゃいましたね(笑)

結局、何が言いたいかというと、引き金になった原因と直接の原因を理解するのが大切だよ、という事です。

例えば、こんな場合はどうでしょう?

足を組む→骨盤が緩む→重いものを持つ→腰痛になる→治療に来る

この場合、引き金は重いものを持つという事です。
しかし、骨盤が緩んでなければ、重いものを持っても大丈夫だった可能性もあるわけです。

というわけで骨盤が緩んだ原因として、足を組むというのがあるわけです。

すると、これが治らないと骨盤の緩みは良くならないので、また腰痛になります。
引き金が違うだけで。

だから私は、生活習慣のくせや動きなどなど、ブツブツ言うのです。

分かって頂けたでしょうか?

ここが改善できないと、なかなか結果が出づらいわけです。
というわけでみなさん、大変ですが一緒にがんばっていきましょう(笑)

私は毎回皆さんの体をチェックすることで、今回の問題でいえば、索状痕が水平になっているな、とか
流動血だ、気泡が白く泡立っている、などそういうことをしっかり見ているんです。

『こうなっていたらこうなる』
それを毎回チェックさせているので、『よく先生分かったね~』なんて動作のくせや症状について答えられるのです。

冗談で透視能力があります、なんて言ってますが(笑)なんてことない、当たり前のことなんです。

1+1=2と同じように、ここがこうなっていたら、こういう力がかかっているなど分かってくるんです。

体は正直ですよね(笑)

もちろんわからないことは山ほどあるので、皆さんとお話をさせて頂いて、そういう動作も影響ありますよって確認していきます。

これを機に原因と引き金について知っておきましょう!!

当院では、引き金もそうですし、原因についても皆さんとお話ししながら良くできる院でありたいと思います。

柔道整復師・CSCS 西村 裕樹